2018.02.16
清華堂のしきたり学
屏風に関するQ&A

Q:屏風を傷めずに扱うには、どのようにすればよいのでしょうか?

A:屏風が最も傷むところは番(ツガイ)部分です。しかも番の上下が切れることが普通ですので、ここに注意を払って取り扱ってください。

Q:屏風を収納するには?
A:屏風を収納するには、木箱が良く、それも桐や樅材のものが適しています。そして、布袋に入れた上で、収納することがベストです。
 これがご予算的に難しいようでしたら、布袋だけでもご用意されて収納されることがよいでしょう。
 いずれにせよ、保管場所は湿気の多いところを避けてください。

Q:屏風も既製品でつくれば安価に仕上がるのですか?
A:屏風は今日、既製品がほとんどありません。ですから、一品一品のオーダーメイドになります。

Q:寸法は決まっているのですか?
A:以前は決まっていました。多くは和室内部の寸法、特に鴨居の高さおよび柱間寸法(柱から柱までの寸法)に屏風寸法が支配されていたからです。
 現在、都市部では狭い土地へゆとりなく建築する場合が多いことから、和室を従来のようにある程度決まった寸法に仕上げることが少なくなっています。
 そのため、既製品市場が廃れ供給もおぼつかなくなり、作品寸法に合わせて屏風装を行うことが主流になっています。
 ただ、茶道で用いる「風炉先屏風」は現在でも茶座敷の畳寸法に合わせます。
いずれにせよ、最近では畳寸法があいまいになってきているため、屏風は注文制作が基本となっています。

Q:屏風は「ぜいたく品」というイメージがあるのですが?
A:確かにそうです。
 ただ、少し前までは、江戸期以降に生まれた、純粋に防風を目的とした実用的な屏風もありました。これを一般に「枕屏風」と呼びます。こうした枕屏風は庶民的な価格で販売されていたものです。
 しかし、現在ではアルミサッシを主とした建具の普及により、次第にこうした什器としての屏風は用いられなくなってきました。

Q:和室の数が少なくなっている現在では、注文する人が少なくなっているのではありませんか?
A:以前に比べて確かに屏風の受注量は減りました。
 しかし、ご自分でなされた刺繍や染色作品といった工芸作品を屏風に仕立て、しかも洋間であるリビングに飾る人も増えてきました。これは、リビング(広い洋間)が増える傾向にある今、スクリーン(目隠し)としての屏風本来の機能が見直されているからではないでしょうか。
 なお、形見分けで処分に困られている着物を屏風に加工して、上手に利用される方もいらっしゃいます。

Q:屏風本来の機能に「スクリーン」としての役割があるのですか?
A:もちろん、あります。
 屏風の最古例は、正倉院に収蔵されている『鳥毛立女図屏風』といわれます。これから発展して、屏風は平安時代の寝殿造内部の間仕切りとして欠かせないものとなりました。 これはまさしく室礼の道具としてだけでなく、スクリーンとしての役割を果たしていたものです。
 これが後世になり、大画面の作品を連続性を維持したまま表現できる、絵画の媒体としての機能を持つようになり今日に至っています。
 すなわち、大きな作品をコンパクトに収蔵できる点が屏風の最大の特長であり、結果、屏風は他に代わるもののない日本独自の表具形式となりました。

Q:屏風は日本のオリジナルでなく、中国から伝承されたと聞いたのですが?
A:いいえ。
 奈良時代の記録によると、当時中国からもたらされた「屏風」と呼んだものは、現在の「衝立」を指します。 これを『烏毛立女図屏風』のように、6枚一組につないだものは当時の中国・朝鮮半島には類例がありません。
 その後、室町時代には多くの中国へ屏風が輸出されましたが、おそらくそれらの影響を受けて中国や朝鮮半島でも屏風がつくられるようになったのでしょう。