解説文中の表具関連業界に特有の符丁や用語は、ご理解の一助となるよう別に説明しています。これも当該項目をクリックして、ご覧下さい。

作品 半被(ユニフォーム)。
仕立 デッサン額タイプ、新装。
ご依頼主 M氏(和歌山県伊都郡)
 ご依頼主は、ご自身が所属する団体の一員として、このユニフォームを着用し『御堂筋パレード』に参加。額装品はその団体事務所に飾られるとのこと。
 記念品としての額装ですが、あまり費用は掛けられないということですので、規格品を利用し、これを深みのあるものに加工しました。
 フレームは、この半被のカジュアルなデザインに向くよう、白に染めたシンプルなものを選定し、マットも同様に取り合わせています。
 なお、フレームにフラットなものを選定したのは、当初より銘板(アクリル製プレート)をご所望されたからであり、このプレートはフレームの見付に合わせて製作し、フレーム下部に取り付けています。

作品 陶板。
仕立 デッサン額タイプ、新装。
ご依頼主 S氏(大阪市北区)
 お手持ちの陶板を額装したいとのこと。作品に使用されている緑色に発色した釉薬の色に合わせて、マットには深緑色の別珍を選定しました。フレームはご予算の都合もあり既製品で取り合わせています。
 陶板など不定形なオブジェは作品を固定する台を作品通りに刳り貫き、作品を少し沈めて固定した上、額装します。右の写真例はレリーフの断片を額装する途中段階のもので、マットにはエンジ色の別珍を使用しています。
 さて、マットの横マージンはもう少し広くとりたかったのですが、飾られるスペースの都合上、また既製品の規格上、このバランスに落ち着きました。フレームには作品の重厚な調子を支えるため、オーク色で平角形状のシンプルなデザインを持つものを選んでいます。
 なお、陶板額装やレリーフの額装では、一般に透明ダストカバーは取り付けません。

作品 木板。
仕立 デッサン額タイプ、新装。
ご依頼主 H氏(大阪市平野区)
 ご友人の結婚式のために制作されたウェルカムボードを、記念に額装して贈られるとのこと。作品の支持体は、自然木を縦に挽き割って板状にしたものです。
 作品はご依頼主の了解を得て、ベニヤパネルへ木ネジで取り付けました。また、裏面には寄せ書きがあるので、これも見せたいとのこと(写真下)。
 作品台に貼ったマットはピンク地のポプリンを使用していますが、これはご依頼主のご要望です。フレームはこの色目とテクスチャに沿う、乳白に染めたシオジ材の木地物を選定しました。
 なお、裏面にあけた窓は多少歪になっていますが、これは作品裏面にあったフシや割れを避けたためです。

作品 能面。
仕立 日本画額タイプ、新装。
ご依頼主 読売新聞大阪本社(大阪市北区)
 作家の方から寄贈された能面を額装したいとのこと。作品は桐箱に入っており、後に取り外して収納できるように、といったご要望です。
 まず社長室に飾られるご予定で、その広い社長室に見合うようマット幅は広くとりました。そして、腰の高い中縁を内に向かって傾斜させています。これは透明ダストカバーを入れる必要上、能面の深みを考慮したからですが、傾斜させたのは作品に影が出ないようにするためです。また、幅の広い中縁はこの傾斜を緩やかにすることができます。
 ちなみに、影が出ないという同じ理由で、紙マットは薄いですが、これも約45°でカットするのが普通です。
 作品の下部に、やや広く空間を取ったのは、ここへプレート板を入れるためです。また、洋額装品は目線の都合上、やや上部に位置させることが普通であるという理由もあります。
 フレームは作品の色調に合わせ、ウルミ色の漆塗隅丸椽としました。ウルミは?(女偏に朱)と字を当てることがあり、能面は「若女」といい、女面であることからといった理由で選定したのでは決してありませんが、ウルミは日本の代表的な漆塗の色であり、艶消しにすることによって作品の質感とよく調和すると判断したからです。
 能面の取付けは耳紐を二重折れ釘へ引っ掛けるだけとしました。これは後に取り外しが利くようにという理由だけでなく、能面自体に傷を付けたくなかったからです。
 なお、能面は素手で扱ってはならず、耳紐の部分のみ手で持つことになりますので、取扱いには注意が必要です。これは能面が湿気に弱いからであり、これに対応するため額の裏面に調湿剤を封入しました。

作品 絵葉書・ワッペン。
仕立 デッサン額タイプ、新装。
ご依頼主 Y氏(大阪市北区)
 旅の思い出やお気に入りの絵葉書をまとめて額装して欲しいとのこと。配置はお客様と相談しながら決めました。額はご依頼主がお手持ちであったものを利用しています。
 絵葉書のような平面作品と、やや立体感のある押絵風のワッペンを同時に額装するため、マットを2枚使いました。
 ワッペンのほうは立体であることから、深さを確保するため、マットとマットの間に、もう一枚見えない厚いマットを入れたのですが、何しろ作品と作品が接近しているため、どうしてもこの脚が見えてしまいます。そこで、オフセットコーナーと呼ぶ装飾を、ワッペンの窓だけに施し、これを見えにくくしました。オフセットコーナーには、もちろんアクセントを付ける目的もあります。
 マットにはグレー系の色目を選定しました。本作品群には多くの色が併存していることから、無彩色系の色目がおのおのを引き立てます。
 なお、これは写真も同様で、写真額装には白を中心に無彩色のマットを多用します。

作品 皮革画。
仕立 デッサン額タイプ、新装。
ご依頼主 S氏(奈良市)
 チベットでお求めになられた、革に描かれた曼荼羅図を額装したいとのご意向です。そして、マットには鬱金色を配して欲しいとのご要望です。
 以前どのような形で鑑賞されていたのか、作品の縁には多くの穴があいていました。この穴を利用して作品を付け留めようと考え、額装計画を開始しました。とはいえ、この作品は時代を経てきており、この穴の強度がいかほどのものかはしれません。
 そこで、写真では見づらいのですが、細長いビーズを十数ヶ所に配し、点ではなく面で留めるようにしました。なお、ビーズの色目や形状はこの作品に似合うものを選定しています。
 さらに、これだけでは作品重量を支えるには不十分と考え、無酸の両面テープも適所にポイントで使用しました。
 ところで、この革絵はもともと多少反っていました。これを平面にのしつけるのですから、将来的な作品の動きに耐えるよう、マット自体も伸縮可能なものにする必要があります。そこで、木枠にファウンデーション前のキャンバス用亜麻布を張り、その上へ鬱金地の綿布を張ったマットにしました。こうした中空構造のマットにすることによって、作品に無理がかからないようにしています。
 フレームにはチーク材を用いました。それも作品の古びた感じを活かすため、クリアーラッカーなどでは仕上げず、素地仕上げとしています。また、透明アクリル板と作品の間には共木(同じ色・材質)のスペイサーを入れ、作品と透明ダストカバーが直接しないようにしています。

 

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