解説文中の表具関連業界に特有の符丁や用語は、ご理解の一助となるよう別に説明しています。これも当該項目をクリックして、ご覧下さい。

作品 紙本竪物。
仕立 五尺六曲屏風一、修復・改装。
ご依頼主 十萬寺 様(大阪市天王寺区)
 ご寺院の什物(什宝)である屏風の修理を承りました。作品は随分と傷んでおり、幾度か修復と補彩の手が入っていました。かつての修復では剥がれ落ちた着彩部分へ補彩することも普通でしたが、今日では当初性が保たれていること(オーセンティシティー)を尊ぶ気風があり、こうした部分へ新たに顔料や染料を差すことはほとんどありません。
 ただ、本作では黒に見える濃紺の背景部分が剥がれ落ちていたことから、裏打後に裏から顔料を施して、極力目立たなくさせました。
 作品は「阿弥陀二十五菩薩来迎図」で、仏教主題のものです。本作には落款がなかったことから、作品主体の表具計画を行いました。縁には小柄の紺地蓮華唐草文金襴を用い、椽は元がそうであったように黒の漆塗椽を新調し、角金具は再使用しました。この再使用の理由も、オーセンティシティーの重視からです。
 ところで、仏画や神祇系の作品で礼拝の対象となるものには、落款を入れないのが常識です。つまり、礼拝の対象となるのは、あくまで表現された内容であって表現した人ではないからです。逆に落款のないものには、画を優先することから荘厳や清浄の必要があるといっても差し支えありません。
 ちなみに、日本の絵画史上、初めて落款が為されたのは雪舟(1420-1506)の作品であるといわれますが、これはそれまでの作品が宗教色の強いものであったと言い換えることができるかもしれません。

作品 唐紙
仕立 風炉先屏風、貼替。
ご依頼主 本長寺 様(大阪市中央区)
 武者小路千家での茶道をたしなんでおられる、ご住職の妹様からのご発注です。風炉先屏風が傷んでいることから、元のような上貼で貼り替えて欲しいとのこと。
 もともと貼ってあった上貼は唐紙だったのですが、版木が廃ったのか、どうにも手配がつきません。そこで、新たな文様での上貼を提案させていただきました。
 それが、上の写真に見る切箔桐(キリハクギリ)の散らし文です。切箔桐は茶方好みの文様であり、以前何かの折に武者小路千家の宗匠が、この風炉先屏風の前で茶を点てられていた記憶があったからです。  
 ところで、茶方好みにおける文様の特徴は植物文の多いところです。唐紙では特に桐文を多用します。桐紋は元来が勅許紋、すなわち天皇の下賜によって使用が許された紋で、長く憧れのブランド紋とされていたものです。  
 しかし、近世には足利将軍や戦国大名の桐紋濫発、すなわち供給過剰により、それまでうかつに使用できなかった天皇家の副紋である桐紋はその価値を落とします。
 また、当時の徳川幕藩体制下での天皇を軽んじる気風と桐紋(桐文)に対する憧憬が、茶道が興隆した江戸初期に、桐文の気軽な使用と流行に繋がっていったのかもしれません。

作品 書作品、半切6点。
仕立 五尺六曲一、貼替。
ご依頼主 T 様(大阪市中央区)
 法事で用いてこられた六曲屏風が、シミや汚れが目立つというので貼り替えて欲しいとのご注文です。
 元あったようにとのご依頼ですので、仕様は変えず、シミを抜いた後に地貼を施し、貼り替えを完了しました。

 

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