解説文中の表具関連業界に特有の符丁や用語は、ご理解の一助となるよう別に説明しています。これも当該項目をクリックして、ご覧下さい。

作品 書作品、半紙横物。
仕立 デッサン額を用いた額装、新装。
ご依頼主 全国青少年教化協議会(東京都港区)
 こちらも販売を目的とした額装。洋間に飾ることができるような額装を、という依頼です。
 ご予算的なものもあるので、まずデッサン額の既製品を用い、クラシックな額装を試みました。選んだフレームは、写真では見づらいのですが、コーナーおよび枠の中程に彫りによる加飾があるもので、色目は深い鉄錆色です。いずれも一般にクラシックイメージを想起させるものです。
 伝統的な日本の額装では、コーナーに飾りを入れないことが普通です。これに対し、クラシックな洋額では一般にコーナーだけでなく、フレーム中程にも多くの加飾が施されます。
 こうしたことから、洋風クラシックイメージの演出にはコーナー飾り、しかも立体的な装飾を加えることによって可能になります。
 マットには紺地の絹絓をヨコ使い、すなわち織り目を垂直にして使用しています。裂にはタテヨコ(経緯)があり、和額装ではヨコ目を水平にすることが普通で、西欧では逆に垂直にすることが一般的です。こうした感性の違いを利用して、裂のヨコ目をあえてタテ使いにすることによって洋風の演出に役立てています。
 つまり、作品から視線を外側へ送ると、作品(和)→?マット(和)→ヨコ使い(洋)→コーナー加飾フレーム(洋)という順となり、作品を洋風に適合させています。こうした洋風化テクニックは他にもあり、清華堂では本来は、作品と装飾空間によって使い分けています。

作品 欧風刺繍作品。
仕立 洋風屏風、新装。
ご依頼主 T氏(東大阪市)
 葉形の図案を散らした、どちらかというと和的な刺繍作品を、洋風の屏風にして欲しいとのご依頼です。
 洋風屏風は、脚付きのものにすることが多くあります。というのも、和室に据える屏風は畳の上が前提であるので、脚付きのものにすると安定感に乏しいからです。
 逆に、洋間に据える場合はフローリングなど床が硬質であり、つまり凹みなどによってバランスを崩すことを考慮する必要がないからです。しかも洋間での生活というのは目線の位置が高いことから、作品自体を相対的に高いところへ位置させる必要があるからです。
 洋風表現を行う際、この目線位置をつねに考慮することが留意点の一つです。もちろん和室に据えることが前提である場合にも同様です。
 さて、本作の場合は、本作を支えるモティーフの重心が右の葉に対する左隻の下の葉にあります。この左隻の葉の鑑賞に便を与えるため、脚付き屏風を提案しました。また、作品と椽の間に空間を設けたのは、作品の主題が優しく、ご依頼主が選ばれたオーク色の重厚なフレームとの兼ね合いに齟齬が生じないようにするためです。
 なお、空間を設けることによって作品に広がりを与えることも可能になりました。

作品 欧風刺繍作品、綿地尺八横物。
仕立 行の草]四方一文字仕立、新装。
ご依頼主 T氏(大阪府狭山市)
 四季花の刺繍作品を軸装希望されました。仕上がった掛物は、息子さん夫婦へさし上げられるとのことです。
 軸装に当たっての留意点は、まず四季花が洋風にアレンジされた図案でありながら、しかも余白が多い、つまりこの作品自体が和洋折衷的なものであるというところです。そして、鑑賞されるのが、若いご夫婦であるということ。
 これらを考慮し、軽みを感じさせるパネル額風の演出を目指して、中廻し天地とも無地で計画を開始しました。
 様式は、主題から[行の行]を選択すべきところですが、古典的な[行の行]仕立では、どうも作品の持つ洋風表現と調和しそうにない。そこで、「四方一文字」という形で進めました。「四方一文字」というのは、一文字裂で細く見廻しにすることをいい、一般に着彩の多い厚塗り日本画の軸装で用いる洋額装的な手法として、今日では広く流布している様式です。
 この様式を選らんだ理由は、一文字の存在自体が本紙に干渉しそうだ、かといって一文字を省けば薄っぺらなものになると考えたからです。
 ただ、このとき見廻しに用いた同じ裂を風帯に用いる、すなわち一文字風帯にすることが普通なのですが、あえて中風帯にしました。
 というのも、一文字風帯にすれば作品の持つ軽みが損なわれ、全体計画には不必要な重厚感が生まれると危惧したからです。また、一文字風帯なら、一文字裂の面積が大きくなり四方一文字が強調されすぎるとも考えたからです。
 なお、軸端には頭切の紅い瑪瑙を使用しました。石材は洋風表現にはもってこいの表具地で、これをもって和洋折衷化の締めくくりとしました。

作品 書作品、サテン地竪物。
仕立 創作表具、新装。
ご依頼主 T氏(大阪市天王寺区)
 新年そうそうの展示会に出品されるとのことで、少し変わったものを所望されました。その後は、リビングに飾って楽しみたいとのこと。作品は地に光沢があるサテンにしたためられています。
 洋風で、なおかつ古典的な軸装を、という条件が付いた難しいご注文でしたが、まず表具専用裂での廻し裂はあきらめました。というのも、作品のサテン地が質感において既存の表具裂と全く合わないからです。
 代わりに紅いサテン地の無地裂を探してきて、これを明朝風に作品の両脇へ配しました。赤を配したのは、作品主題から、そして年初の催しという点を考慮して、紅白の構図を意識したからです。これは、作品は漢語ですが、目出度さを感じさせるものという、ご依頼主の追加条件もあったからであり、目出度さは神道系の表現を伴うものであるからです。
 作品の両脇へ裂を配したのは作品の幅が詰まっていたからなのですが、作品の上下に裂を廻さなかったのは、タピスリー風の仕上がりが念頭にあったからであり、あまりに丈が高すぎるとリビングで鑑賞する際、設置に制約をうけ支障をきたすと考えたからです。
 軸端には金箔入りの水晶代用(透明アクリル樹脂製)頭切タイプを使用しました。「目出度さ」の表現としては、やや陳腐かなとも思ったのですが、水晶は神道系に好適な表具地であるという理由もあります。
 ここまでくればいっそ軸紐も五色の糸を使ってと。大切な取合せがエスカレートしたことは否めませんが、ご依頼主には喜んでいただけました。
 なお、掛緒は従来のピンと張る仕方とは違え、大幅にゆるめてタピスリー風に掛けることができるようにしました。

作品 日本画作品、桐材(板絵)。
仕立 硯屏、新装。
ご依頼主 M氏(大阪市北区)
 桐板に日本画が描かれた作品を額装されたいとのこと。大きさは寸松庵と呼ばれる色紙サイズの1/4のものです。そして、この桐板は小品だったことから、写真立てのように棚でも飾れるよう、脚付きのものにしてほしいとご希望されました。
 まずは、既製品を使用しようと考えましたが、思うようなフレームがありません。というのも、寸松庵用額はほとんどマットが布貼りタイプのものであり、これが桐板の素材感と調和しないからです。
 そこで、写真では見づらいのですが、幅広額を直椽で使用しようと計画しました。色目は高級感を与えるため黒塗にしたのですが、この黒塗り部分には金砂子を撒きました。というのも、作品には金砂子表現があり、黒塗の強さを緩和するため、金砂子を施すことによって、作品に広がりを与えようとしたからです。
 アクリル板は作品だけを覆うのでなく、フレーム全体をカバーするパネル額使用にしています。これはマットと作品の一体化を目指したものです。
 なお、本作のように、オーダーメイドとはいえ大きさが規格品であれば、お値段もリーズナブルなものになります。

作品 刺繍帯。
仕立 パネル額、新装。
ご依頼主 M氏(大阪市北区)
 帯の端布をパネル装で楽しみたいとのこと。モダンな感じを希望されたことから、縁には黒のコットンを用いました。コットンのざっくりした質感がこの作品に良く調和したからです。
 作品は浮かし張りにして、前面を透明アクリル板で保護しました。透明アクリル板を支える脚には、ステン色の鉄製金具を用いています。この色目と素材感が、黒のコットン縁と透明アクリル板をうまくつないでいます。
 ところで、作品は刺繍された帯です。裏打の際には裏に回っている余分な糸を刈り取らなくては裏打が浮いてしまいます。下の写真は、裏打の前処理を写したものです。

 

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