解説文中の表具関連業界に特有の符丁や用語は、ご理解の一助となるよう別に説明しています。これも当該項目をクリックして、ご覧下さい。

作品 刺繍作品、半切1/2横物。
仕立 衝立、改装。
ご依頼主 S氏(京都府宇治市)
 二面の洋額装作品を衝立に改装しました。いずれも刺繍作品です。水芭蕉図はご依頼主のお母様が制作されたもの。もう一面のアブストラクトな蝶図はそのお師匠さんが制作されたものです。
 蝶図のほうはドレープ状の厚い布に刺繍を施した特殊なもので、5pほどの深みがあります。逆に水芭蕉図は繻子織の絹に刺繍を施した薄物です。これらを表裏に配し、しかも両面とも透明アクリル板でカバーして欲しいとのご意向です。
 衝立の枠は、これらの厚みを呑み込む必要がありますので、柱のような太さになります。当初よりかなりの重量が見込まれましたので、そのようにご説明いたしますと、お住まいは旧家で玄関に据えれば移動はあまりしないというご回答を得て、製作を開始しました。
 枠は蝶図の現代的な表現と旧家のどっしりとした雰囲気を摺り合わせるため、渋みのある深緑に染めました。もちろん水芭蕉図との兼ね合いも考慮してのことです。また、同じ理由で枠のコーナーも角丸ではなく角組にしています。
 水芭蕉図のマットには浅葱地の無地金襴を用いました。また、太い枠とのバランスを考慮し、ダブルマットでやや立体的に仕上げています。これには面金を使ってもよかったのですが、作品の広がりを重視し、同色の二段マットを選定しました。

作品 西国三十三箇所観音めぐり、お札。
仕立 パネル額、新装。
ご依頼主 O氏(奈良県生駒郡)
 西国三十三箇所で賜ったお札を、一つにまとめる形での額装依頼を頂きました。まだお若いご夫婦が、宗教心から巡礼したというより、休みの合間にドライブの目安とされたとのこと。
 ただ、賜ったお札はやはり無下にはできない、かといって洋間ばかりの自宅には旧来の和額装にすると似合わないとおっしゃるので、写真のような額装を提案させていただきました。
 これはパネルにお札を順に張り、透明アクリル板でカバーしたものです。マットの色目については、他の仏表具がそうであるように、ご相談の上、赤地のものを選びました。仕様を支えるのがこのマット部分だけですので、マットには素材感に優れたを用いています。つまり、裂地自体に力のあるものを配さないと、こうした場合は往々にして詰まらないものに仕上がるからです。
 なお、パネルの大きさは、玄関脇に飾られるというので、これに合わせた寸法にしています。
 ところで、仏表具の中廻しには赤地のものを用いることが普通です。これはある民俗学者によると、赤は火の連想から魔除けにつながるからだといいます。確かに、こうした理由もあるのでしょうが、かつて赤の染料は随分と高価で、荘厳の必要な仏具にはその稀少性によるところも大きかったのではと思います。

作品 書作品、変わり形。
仕立 複合パネル額、新装。
ご依頼主 T氏(東大阪市)
 一門展に出品されるということで、少し変わったものを所望されました。そこで、ご依頼主の円盤形にして欲しいという基本アイデアを元に、ご相談の上で立体額装にしました。
 当初、落款印は作品の上に捺される予定でしたが、印も立体化してはどうかと提案させていただきましたところ、写真のようなデザインに落ち着きました。
 作品二点と印は、それぞれ下駄を履かせて高さを違え、台のパネルに据え付けています。台マットには壁装に用いる和紙タイルを縦向き、次は横向きというように目を違え変化をつけて貼ってみました。それは目を揃えて貼ってしまうと面白みが減少すると判断したからです。
 なお、主題が「月」であることから、地色には夜陰を思わす紺地のものを選定しています。

作品 書作品。
仕立 複合パネル額、新装。
ご依頼主 T氏(東大阪市)
 前回、立体額装させていただいたものが好評で、その流れで今回も立体物で変わったものをと所望されました。作品タイトルは『凸凹』であり、作品も凹凸を付けて欲しいとのことです。
 まず、作品の支持体が4点とも地色が違うことから、これらをまとめるため、マットの地色には無彩色の黒を選定しました。素材には、洋風を意識し、ざっくりとした質感の綿布を用いています。
 作品は4点とも脚をかませて高さを違え、台パネルに据え付けています。また、落款印も前回同様、作品の上に捺される予定でしたが、アクセントとして変化が欲しかったことから、作品面より少し沈めてみました。
 ところで、ここでご紹介する例には、立体的な額装作品が多くあります。というのも、洋風表現に必要なものの一つに立体性があるからです。

作品 着物。
仕立 楕円デッサン額装、新装。
ご依頼主 T氏(東大阪市)
 ご依頼主は亡きお母様がお召しになっていた思い出の着物を、何らかの形で残して鑑賞したいとのご意向です。
 色々とご相談を重ねるうちに、一つは楕円フレームにしてリビングで飾ろうということになりました。
着物はさまざまな技法で加飾されますが、これは手描きで絵付けされたものです。着物を縫い止めている糸をすべて外し、裏打後にフレームに収めました。
 他にも和的な直椽、また色紙仕立などに加工させていただきました。

お仕立て前

端布は色紙に

一部は和額に

 
作品 書作品、色紙
仕立 デッサン額を用いた額装、新装。
ご依頼主 全国青少年教化協議会(東京都港区)
 ご依頼主は宗派を越えた仏教会が運営する財団法人。宗派管長や高僧の方々による墨跡を全国の百貨店などで販売し、販売益によって青少年育成活動を行っておられます。当社は40年以上もこちらのお仕事をさせて頂いています。
 本作は法隆寺の貫首、大野玄妙師の書作品です。作品はそもそも色紙であったのですが、台紙を剥ぎ、薄物にした上で裏打を行いました。
 さて、今回のご依頼は洋間にも和室にも飾っていただいて違和感のないものというご依頼です。作品がどのようなお部屋に飾られるのかは、こうしたエンドユーザーの見えない仕事ではわからないのですが、つねに額が据えられた場面を想定して仕事を進めています。
 この場合は、カジュアルな空間にもお掛けいただけるよう、淡ベージュ色に色付けしたシンプルで四角いフレームを選びました。
 ただ、このような「道」と大書された伝統的な作品は、現代的なフレームに合わせづらいものがあります。このあたりを摺り合わせるため、写真では見づらいのですが、マットには同系色の地色を持つ小牡丹唐草銀欄を使用しています。そして、作品は3oほどマットから手前に飛び出した「浮かし張り」にしています。
 同様な例に、右の「一期一会」があります。これも元は6F色紙であったもので、クラシックイメージを想定しています。

 

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