解説文中の表具関連業界に特有の符丁や用語は、ご理解の一助となるよう別に説明しています。これも当該項目をクリックして、ご覧下さい。

作品 書作品、画仙紙半切横物。
仕立 欄間額、新装。
ご依頼主 N 様(大阪市天王寺区)
 ご依頼主は長年に亘って書道を習っておられた方。そのお師匠さんの書をカジュアルな和室に飾りたいとのご依頼です。
 作品は篆書体という書体で表現されています。篆書作品は通常、紋綸子を取り合わせることが多いものです。それは篆書体がやはり中国風というイメージが強いからであり、今日でも中国の軸装では紋綸子を用いることが普通であるからです。
 ところで、欄間額において篆書作品は作品化されることが少なく、また特に本作は遊び心が微笑ましい面白い表現であることから、カジュアルなスタイルには向いています。そこで、中国風というところから離れ、また文様の与える示唆を嫌って、あえて無地裂である紫地のを選定しました。
 無地裂は無地ゆえに素材感が重要です。紬風のテクスチャを持つ?は、現代の日本人が考える和のイメージを良く反映するものであり、そしてカジュアルスタイルの取合せに好適です。
 ただ、額枠のコーナーは角丸ではなく、角組にしました。というのも、角丸額は日本で生まれたデザインであり、唐様作品には角組額が似合うからです。また、額枠の塗装も漆塗ではなく広葉樹材の木地物にブラウン系の濃い塗装を施しました。木目を見せる表現は洋風表現に好適で、ご依頼主の床の間も伝統的なそれとは異なり、広葉樹材が多用されていたからです。

作品 日本画作品、絹本尺八横物。
仕立 日本画額、改装。
ご依頼主 S 様(豊中市)
 軸装されていた作品を和額に改装されたいとのこと。中縁には、描かれた百合に使用されている、淡い水色に揃えた薄色の無地金襴を使用しました。この選定によってモチーフの百合花が一層引き立ちます。
 枠は木地椽の外枠と金泥仕上げの内枠による二重椽。外枠にはサクラ材にクリアラッカー仕上げしたものを使用しました。これは画題の清々しい優しさと調子を揃えるためです。
 内枠の金泥仕上げは面金と同じ塗装にし、形状はいずれも内へ向かって奥まってゆく「内流れ」にしました。つまり、面金は内枠に対し入れ子状となっており、これが枠から面金までの統一感を担っています。
 なお、「内流れ」構造には目線を中へ中へと誘い込む効果があります。
 二重椽は「箱椽」とも呼ばれる日本のオリジナルデザインです。二重椽は一般に重厚な視覚効果を得るのですが、この場合は外枠を白木地で使用し、重厚感というよりはむしろ作品と飾られる壁面とをきっぱりと区切る意図を持ってのことです。
 ところで、本作品は桐の共箱に収納されていました。本作の場合は、共箱になされた画題、落款ともに丈が短かったことから、写真のように作品下地の裏側へ収納しました。
 なお、納まりきらない場合は、額の保管箱へ別に収納することがあります。

作品 四国八十八ヶ所巡り 御影札。
仕立 欄間額、新装。
ご依頼主 S 様(大阪市淀川区)
 四国八十八ヶ所を巡礼しますと、各寺院で御影札(オミエフダ)がいただけます。これを八十八ヶ寺分まとめて表装することがあります。額装・屏風装・軸装などさまざまな形式で表装するのですが、写真は額装したものです。真ん中に高野山の金剛峯寺でもとめられた御宝号と弘法大師さんの御影を配しています。
 中縁には、ご依頼主のご宗旨が高野山真言宗であるとのことで、三鈷杵を十文字に意匠した羯磨文(カツマモン)と真言輪宝文を組み合わせた濃地の金襴を使用しました。枠は仏教主題の作品ですので黒の艶有り椽です。
 清華堂では御影札を重ねることはせず、それらの間は紺地の魚子と呼ぶで継ぎ立てています。こうすることによっていずれの寺院も上、下がないよう配慮するとともに、鑑賞上も一つひとつのお札に独立性が保たれ、それぞれがくっきりと浮かび上がるような効果を狙っています。
 また、仏仕立で見切るのが普通でもあるからです。

作品 紙本書作品 小品竪物。
仕立 デッサン額、新装。
ご依頼主 S 様(大阪市淀川区)
 ご依頼主はマンションにお住まいで、床の間がおありでないということ。ご友人の書家に書いていただいた御名号を洋間に掛けたいとのご意向です。 縁には錆朱地の四つ手雲金襴を配しました。赤地も雲柄も仏表具で多用するものです。枠は既製品のデッサン額黒を使用しました。既製品を用いればご予算的にもリーズナブルなものに仕上がります。

作品 紙本拓本作品 小品。
仕立 欄間額、新装。
ご依頼主 S 様(奈良市)
 中国で求められた漢代の瓦当(ガトウ)を拓本した小品の額装依頼です。瓦当とは筒瓦の先を指し、中国のそれには多く四字の吉祥句が表わされているものです。
 玄関先に飾られるということで、フレームは壁に用いられている化粧合板の色に合わせ、柳葉色に染めたものを用い、また中縁にはこのフレーム色に見合ったベージュ色を配して、全体を温和しくまとめてみました。
 というのも、広いお玄関だったのですが、他にも額装品が同じ壁面に多く飾ってあったからです。つまり、これらと調和させるには、壁面と一体化させ、額装品になるべく強い主張をさせないほうが賢明であると判断したからです。そして、本作を立体的な日本画額タイプで額装しなかったのも同じ理由です。
 フレームは三角形状のものを選定しました。これは仕立てこそ欄間額タイプの和的なものですが、洋額風味を少し加えたかったからです。つまり、三角形状のデザインを施したフレームは伝統的な欄間額では使用せず、その仕様は洋風感を喚起させるものであるからです。
 中縁幅を見廻しにしなかったのは、本作を既製品に合わせたからという理由だけでなく、見廻しにすれば広い壁面に掛けたとき、少し息の詰まった感じの生ずることが予想されたからです。3点の作品も左右だけヨコにわずか余白を設け、これに対応させました。
 ただ、瓦当の拓本はそれぞれ年代が異なっていることから一つにはまとめず、独立性をもたせるために各作品を濃い色目ので見切っています。

作品 刺繍作品。
仕立 デッサン額、新装。
ご依頼主 T 様(東大阪市)
 竹図の刺繍を、別に刺された竹葉図案の刺繍布をマットにして額装して欲しいとのご依頼です。
 竹葉の刺繍は裏打ちした後、刳りぬいた集成材に貼ってマットにしました。いずれも作品であることから、これは直椽仕様ともいえます。
 椽には画面を締めるためだけでなく、マット自体も作品であることから、マットにも目が注がれるよう少し太めの濃い焦茶に色付けしたデッサン額を使用しました。同じ理由でフレーム形状は内流れのものにしています。
 ところで、作家さんから直接に表具・額装の依頼を受ける場合、こうした表具地までもご自身で作品化されることが、まれにあります。これが掛物であれば描表具(カキヒョウグ)と呼んでいます。描表具は、支持体が本紙だけでなく表紙の表具地にも及ぶものです。つまり、本紙以外の表紙にも書画、あるいは描文様をしたためたものです。
 洋額装でもこのような例があります。洋額のフレームは様式によってかなりデコラティブに加飾されます。たとえばコーナーにアカンサス葉飾などを木彫したもの、金箔の地を研ぎ出して古美を表現したものなどがそうです。そこで、たとえば20世紀初頭に活躍したジョルジュ・ルオーがフレームまで装飾的な絵付けを行ったように、フレームの加飾が気に入らず、これを自分で行う方もいらっしゃるわけです。
 また、額装業者へ自作専用のフレームを特注される方もあります。表具においてもご自分専用の裂を所望され、これをご希望通りの図案で新たに織り出すこともあります。当社でも四天王寺さまや、生駒の宝山寺さまなど、過去多くの別織り緞子で表具してきました。もちろんこうした裂は留型とし、無関係の作品に使用しないばかりか、許可なく織り出せないようにしています。
 なお、専用フレームやオリジナルデザインは由緒正しさの証明の一つとなるものです。

 

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